派遣の三年ルールとは?影響や適用条件、働き続ける方法を解説

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派遣の三年ルールとは?影響や適用条件、働き続ける方法を解説

「派遣社員には『3年ルール』というのがあると聞いたけれど、どういうルール?」
「いま派遣で働いている会社でもうじき3年経つ、できればこのまま働きたいけれど、契約更新はしてもらえる?」

派遣で働いていて、そんな疑問を持っている方もいるでしょう。

「派遣3年ルール」とは、簡単にいえば「有期雇用の派遣社員が、同じ企業の同じ部署で働ける期間は最長で3年まで」という決まりのことです。
2015年に労働者派遣法が改正された際に、派遣で働く人の待遇改善を目的として定められました。

ただし例外があり、以下の場合には3年を超えて働き続けることが可能です。

  • 無期雇用契約を結んでいる場合
  • 60歳以上の場合
  • 有期プロジェクトに派遣されている場合
  • 1ヶ月の勤務日数が通常の半分以下かつ10日以下の場合
  • 産休・育休・介護休暇などの代用として派遣されている場合

また、「同じ職場で3年以上働きたい」という人は、以下の方法でそれが可能になります。

  • 無期雇用派遣に切り替えてもらう
  • 派遣先に直接雇用してもらう
  • 部署を異動する

そこでこの記事では、派遣の3年ルールについて知っておくべきことをまとめました。

◎「派遣3年ルール」とは
◎「派遣3年ルール」が適用されない5つのケース
◎「派遣3年ルール」を免れる3つの抜け道
◎よくある質問

最後まで読めば、知りたいことがわかるはずです。
この記事で、あなたが派遣社員として気に入った職場に長く勤められるよう願っています。

 

1.「派遣3年ルール」とは

「派遣3年ルール」とは

この記事を読んでいるあなたは、「派遣の3年ルール」についてくわしく知りたいと思っているはずです。
そこでまず、「派遣3年ルールとはどんなルール?」という疑問に、わかりやすく答えておきましょう。

1-1.「派遣3年ルール」とは、「同じ職場で働ける期間は最長3年」という決まり

「派遣3年ルール」とは、簡単にいえば「有期雇用の派遣社員が、同じ企業の同じ部署で働ける期間は最長で3年まで」という決まりのことです。
これは、2015年に労働者派遣法(正式名称「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」)が改正されたことにより加わった法律で、派遣で働く人の待遇改善を目的として定められました。

「3年以上働けないということは、3年経ったら雇い止めになるということでは?」「それではむしろ派遣社員にとっては条件が厳しくなるのでは?」と思うかもしれませんが、そうではありません。

3年経ったら、派遣社員は同じ企業の同じ部署では働けなくなるかわりに、派遣会社にはその派遣社員の希望に沿って、「新しい派遣先を提供する」「いまの派遣先企業に直接雇用してもらえるよう働きかける」「派遣会社で無期雇用する」といった「雇用安定措置」をとることが義務付けられているのです。

つまり、派遣社員が3年という長期にわたってきちんと勤めあげた場合には、より安定した働き方に待遇改善される可能性が出てくる、とも考えられます。
この「雇用安定措置」については、「1-4.3年後には派遣会社から『雇用の安定化措置』がとられる」でさらにくわしく説明しますので、そちらも読んでください。

ちなみに、派遣3年ルールについて定めた派遣法の条文は以下です。

【労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律】

(労働者派遣の期間)

第三十五条の二 派遣元事業主は、派遣先が当該派遣元事業主から労働者派遣の役務の提供を受けたならば第四十条の二第一項の規定に抵触することとなる場合には、当該抵触することとなる最初の日以降継続して労働者派遣を行つてはならない。
第三十五条の三 派遣元事業主は、派遣先の事業所その他派遣就業の場所における組織単位ごとの業務について、三年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣(第四十条の二第一項各号のいずれかに該当するものを除く。)を行つてはならない。

<中略>

(労働者派遣の役務の提供を受ける期間)

第四十条の二 派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。ただし、当該労働者派遣が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、この限りでない。
一 無期雇用派遣労働者に係る労働者派遣
二 雇用の機会の確保が特に困難である派遣労働者であつてその雇用の継続等を図る必要があると認められるものとして厚生労働省令で定める者に係る労働者派遣
三 次のイ又はロに該当する業務に係る労働者派遣
イ 事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務であつて一定の期間内に完了することが予定されているもの
ロ その業務が一箇月間に行われる日数が、当該派遣就業に係る派遣先に雇用される通常の労働者の一箇月間の所定労働日数に比し相当程度少なく、かつ、厚生労働大臣の定める日数以下である業務
四 当該派遣先に雇用される労働者が労働基準法第六十五条第一項及び第二項の規定により休業し、並びに育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)第二条第一号に規定する育児休業をする場合における当該労働者の業務その他これに準ずる場合として厚生労働省令で定める場合における当該労働者の業務に係る労働者派遣
五 当該派遣先に雇用される労働者が育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第二号に規定する介護休業をし、及びこれに準ずる休業として厚生労働省令で定める休業をする場合における当該労働者の業務に係る労働者派遣
2 前項の派遣可能期間(以下「派遣可能期間」という。)は、三年とする。

出典:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

1-2.「派遣3年ルール」には2種類ある

ところでこの「派遣3年ルール」は、以下の2種に分けて考えられます。

  • 個人に対する期間の制限
  • 派遣先企業に対する期間の制限

いずれも期限は同じく3年ですが、その適用対象や細かいルールが異なりますので、それぞれ説明しましょう。

1-2-1.個人に対する期間の制限

「個人に対する期間の制限」とは、派遣で働く労働者=派遣社員に対して働く期間を制限するルールです。
前述したように、同じ派遣社員が、同じ企業の同じ部署で3年を超えて派遣で働くことはできません。
これを「人で3年ルール」とも呼びます。

このルールのポイントは、「同じ企業の同じ部署では働けない」という点です。
言い換えれば、3年経った時点で、派遣先の部署を変えてもらうことができれば、同じ企業で3年を超えて働くことができます

厚生労働省パンフレットより

出典:厚生労働省パンフレット「派遣で働く皆様へ

1-2-2.派遣先企業に対する期間の制限

一方、「派遣先企業に対する期間の制限」とは、派遣社員を受け入れる企業を対象としたルールです。
同じ派遣先企業では、3年を超えて派遣社員を受け入れてはいけないと定められています。

たとえばA社のB部署で派遣社員Cさんを受け入れたとしましょう。
その後、Cさんが1年でやめてすぐにDさんが派遣されてきた場合、Cさんの派遣期間とDさんの派遣期間の合計が3年を超えてはいけません。
ということは、DさんはB部署では最長2年までしか派遣で働けないのです。

ただし、A社の「過半数労働組合」(=労働者の過半数で組織する労働組合)から意見を聴いた上で同意が得られれば、派遣の受け入れ期間は最長であと3年延長することができます

派遣の受け入れ期間は最長であと3年延長することができます

出典:厚生労働省パンフレット「派遣で働く皆様へ

この延長には回数制限はないので、3年ごとに労働組合に意見を聴いて、派遣社員を入れ替えながら派遣受け入れを続ける企業もあります。

1-3.「3年」の数え方

さて、ここまで派遣3年ルールの期限について、「3年」「3年を超えて」と表現してきましたが、この期間の数え方には注意が必要ですので、説明しておきましょう。

まず、派遣で働ける・派遣を受け入れられる期限の「3年」ですが、これは単純にカレンダーでぴったり3年間です。
たとえば、2023年2月15日から働き始めた場合は、2026年2月14日まで働くことができます。

反対に、これ以上は働くことができない「3年を超えた最初の日」を「抵触日」と呼んでいます。
前述の例でいえば、2026年2月15日が抵触日というわけです。

ただし、注意が必要なのは、「個人の期限と派遣先企業の期限が異なる場合は、先にきた期限のほうが有効」ということです。

たとえば、A社のB部署でCさんが2023年2月15日から2024年2月14日までの1年働き、すぐに2024年2月15日からDさんが派遣されたとします。
この場合、Dさん個人の3年ルールでは、2027年2月14日まで働けることになります。

が、A社の立場で考えると、派遣の受け入れは2023年2月15日から3年間ですから、2026年2月14日までです。
Dさん個人の期限=2027年2月14日よりも、A社の企業としての期限=2026年2月14日のほうが先なので、Dさんが働けるのは、2026年2月14日までということになるのです。

「3年」の数え方

Dさん本人は期限いっぱいの3年間働くつもりでも、企業側で前任者がいれば、3年経たずに抵触日を迎えるケースもあるというわけです。
ただし、前述したように、過半数労働組合の同意があれば、企業側の期限を延長することができます
その場合はDさんも3年間働けるようになります。

このような混乱を避けるため、派遣先企業は派遣元(=派遣会社)に対して抵触日を知らせる義務があります。
派遣社員も、就業前に契約書をよく読むか、派遣会社の担当者に聞くなどして、かならず抵触日を確認しておきましょう。

1-4.3年後には派遣会社から「雇用安定措置」がとられる

「1-1.『派遣3年ルール』とは、『同じ職場で働ける期間は最長3年』という決まり」で触れましたが、この「派遣3年ルール」は派遣社員の待遇改善を意図して作られた法律です。
同じ派遣社員が、同じ企業の同じ部署に継続して3年派遣される見込みになった際には、派遣会社はその派遣社員に対して「雇用安定措置」をとることが義務付けられています。

この決まりの内容をわかりやすくまとめましたので以下を見てください。

【雇用安定措置の概要】

措置の対象
(措置を受けられる人)

同じ組織単位(同じ企業の同じ部署など)に継続して3年間派遣される見込みがある派遣労働者
※ただし、派遣労働者本人が派遣会社に「派遣終了後も継続して就業したい」と希望する必要があります。
※「派遣元で無期雇用されている派遣労働者」や「60歳以上の派遣労働者」は対象外です。

措置をとる者

派遣元(=派遣会社)

措置の内容

以下の1〜4のいずれか(=義務)

1.派遣先企業に直接雇用を依頼する
 →派遣先が同意すれば、派遣先の社員になる

2.新たに別の派遣先を提供する
 →ただし、その条件が派遣労働者の能力、経験に合ったものでなければならない

3.派遣元で、派遣労働者以外の形で無期雇用する

4.その他、雇用の安定を図るための措置を講じる
 →紹介予定派遣など

派遣労働者は、派遣会社に対して1~4のどれかを希望することができ、派遣会社はなるべくその希望に沿うよう努めなければなりません。
※1を依頼した場合、もし派遣先に断られたら、派遣会社はかならず2〜4のいずれかを行わなければなりません。

備考

・雇用安定措置は、派遣期間が3年見込みの人に対しては、派遣会社の義務ですが、派遣期間が1年以上3年未満見込みの人に対しては、努力義務とされています。
・雇用安定措置の義務は、派遣会社がその義務を適切に履行するか、派遣労働者が就業継続を希望しなくなるまで継続します。

つまり派遣社員は、同じ職場で3年働き続けることができれば、その後は「派遣先の会社で契約社員や正社員になりたい」「別の職場に行きたいので、自分に合ったところを紹介してほしい」「派遣会社の正社員になりたい」といった希望を出すことができ、派遣会社はなるべくその希望がかなうように動いてくれるというわけです。

ただ、この措置は、派遣社員側が派遣会社に対して希望を出さなければ実施されませんので、希望する派遣社員は、3年継続見込みになった段階で、派遣会社の担当者にその旨を伝えてください。

1-5.「派遣3年ルール」は廃止された?されていない?

ここまで「派遣3年ルール」についてくわしく説明してきました。
が、中には「インターネットでこのルールについて調べたら、『派遣3年ルールは廃止された』という書き込みを見かけた」という人もいるようです。
これは本当でしょうか?

結論から言えば、「派遣3年ルール」自体は廃止されていません
2023年3月現在、労働者派遣法に以下のような記載があり、ここまで説明してきた決まりが生きています。

【派遣3年ルールの根拠法令】

【労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律】

(労働者派遣の期間)

第三十五条の二 派遣元事業主は、派遣先が当該派遣元事業主から労働者派遣の役務の提供を受けたならば第四十条の二第一項の規定に抵触することとなる場合には、当該抵触することとなる最初の日以降継続して労働者派遣を行つてはならない。
第三十五条の三 派遣元事業主は、派遣先の事業所その他派遣就業の場所における組織単位ごとの業務について、三年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣(第四十条の二第一項各号のいずれかに該当するものを除く。)を行つてはならない。

<中略>

(労働者派遣の役務の提供を受ける期間)

第四十条の二 派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。ただし、当該労働者派遣が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、この限りでない。

一 無期雇用派遣労働者に係る労働者派遣

二 雇用の機会の確保が特に困難である派遣労働者であつてその雇用の継続等を図る必要があると認められるものとして厚生労働省令で定める者に係る労働者派遣

三 次のイ又はロに該当する業務に係る労働者派遣

イ 事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務であつて一定の期間内に完了することが予定されているもの

ロ その業務が一箇月間に行われる日数が、当該派遣就業に係る派遣先に雇用される通常の労働者の一箇月間の所定労働日数に比し相当程度少なく、かつ、厚生労働大臣の定める日数以下である業務

四 当該派遣先に雇用される労働者が労働基準法第六十五条第一項及び第二項の規定により休業し、並びに育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)第二条第一号に規定する育児休業をする場合における当該労働者の業務その他これに準ずる場合として厚生労働省令で定める場合における当該労働者の業務に係る労働者派遣

五 当該派遣先に雇用される労働者が育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第二号に規定する介護休業をし、及びこれに準ずる休業として厚生労働省令で定める休業をする場合における当該労働者の業務に係る労働者派遣

2 前項の派遣可能期間(以下「派遣可能期間」という。)は、三年とする。

出典:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

【雇用安定措置についての根拠法令】

【労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律】

特定有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等)

第三十条 派遣元事業主は、その雇用する有期雇用派遣労働者(期間を定めて雇用される派遣労働者をいう。以下同じ。)であつて派遣先の事業所その他派遣就業の場所における同一の組織単位の業務について継続して一年以上の期間当該労働者派遣に係る労働に従事する見込みがあるものとして厚生労働省令で定めるもの(以下「特定有期雇用派遣労働者」という。)その他雇用の安定を図る必要性が高いと認められる者として厚生労働省令で定めるもの又は派遣労働者として期間を定めて雇用しようとする労働者であつて雇用の安定を図る必要性が高いと認められるものとして厚生労働省令で定めるもの(以下この項において「特定有期雇用派遣労働者等」という。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、次の各号の措置を講ずるように努めなければならない。

一 派遣先に対し、特定有期雇用派遣労働者に対して労働契約の申込みをすることを求めること。

二 派遣労働者として就業させることができるように就業(その条件が、特定有期雇用派遣労働者等の能力、経験その他厚生労働省令で定める事項に照らして合理的なものに限る。)の機会を確保するとともに、その機会を特定有期雇用派遣労働者等に提供すること。

三 派遣労働者以外の労働者として期間を定めないで雇用することができるように雇用の機会を確保するとともに、その機会を特定有期雇用派遣労働者等に提供すること。

四 前三号に掲げるもののほか、特定有期雇用派遣労働者等を対象とした教育訓練であつて雇用の安定に特に資すると認められるものとして厚生労働省令で定めるものその他の雇用の安定を図るために必要な措置として厚生労働省令で定めるものを講ずること。

2 派遣先の事業所その他派遣就業の場所における同一の組織単位の業務について継続して三年間当該労働者派遣に係る労働に従事する見込みがある特定有期雇用派遣労働者に係る前項の規定の適用については、同項中「講ずるように努めなければ」とあるのは、「講じなければ」とする。

出典:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

「廃止された」というのは、2015年の労働者派遣法改正で、以下の点が変更されたことを指していると思われます。

  • 「特定派遣」(=派遣会社の社員になり、派遣先に常駐して働く派遣形態)が廃止された
    政令で定める26業務」(=ソフトウェア開発、機械設計など)には派遣期間制限がなかったが、この区別が廃止されてすべての派遣業務に3年ルールが適用された

つまり、2015年の労働者派遣法改正により、派遣3年ルールは廃止ではなくむしろ全業種に適用されるようになった、というわけなのです。

 

2.「派遣3年ルール」が適用されない5つのケース

「派遣3年ルール」が適用されない5つのケース

ここまで、「派遣3年ルール」とはどんな決まりなのかを説明してきました。
が、実はこのルールが適用されないケースがあります。

それは以下の5つです。

  • 無期雇用契約を結んでいる場合
  • 60歳以上の場合
  • 有期プロジェクトに派遣されている場合
  • 1ヶ月の勤務日数が通常の半分以下かつ10日以下の場合
  • 産休・育休・介護休暇などの代用として派遣されている場合

これらに該当する場合は、3年を超えて同じ職場で働くことが可能ですので、それぞれ説明します。

2-1.無期雇用契約を結んでいる場合

まず、派遣会社と無期雇用契約を結んでいる場合は、派遣3年ルールが適用されません

「無期雇用契約」とは、一般的な有期雇用の派遣社員とは異なり、派遣会社と契約期間の定めなしに契約して、派遣先企業で派遣社員として働く契約形態です。
この場合は、個人の期間制限だけでなく、派遣先企業の期間制限もありませんので、同じ派遣社員が同じ職場で3年を超えて働くことができます。

ということは、もし派遣会社が、もうじき派遣期間が3年になる派遣社員を「このままこの派遣先で働いてほしい」と考えた場合は、契約を有期雇用から無期雇用に変更すれば、そのまま働き続けられるわけです。

ちなみに無期雇用については、別記事「無期雇用派遣とは?制度内容、向いている人、なる方法まで詳しく解説」でくわしく説明していますので、知りたい場合はそちらを読んでください。

2-2.60歳以上の場合

有期雇用の派遣社員で、派遣先企業での受け入れから3年が経った時点で60歳以上になる場合も、3年ルールの対象外です。
たとえば、働き始めたときは57歳で、3年経った抵触日に60歳になっていれば、3年を超えても働き続けられます。

これは、この年代の人が雇い止めにあうと、再就職が難しいことを踏まえた救済的な措置です。
65歳で年金がもらえるようになるまで、少しでも長く働き続けられるようにと考えられました。

このケースも無期雇用と同様に、個人の期間制限、派遣先の期間制限どちらもなく、働き続けることが可能です。

2-3.有期プロジェクトに派遣されている場合

特定のプロジェクトの一員として派遣されていて、そのプロジェクトの終了期限が決まっている場合も、3年ルールの対象外です。

たとえば、「2023年2月1日から2028年3月1日までの約5年1か月」のプロジェクトに初日から参加する派遣社員は、本来は3年ルールで2026年1月31日までしか働けません。
が、期限があらかじめ決まっているプロジェクトなので、それが完了する2028年3月1日まで働くことが認められているのです。

ただし、このプロジェクトは「事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務」(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」第40条2 第1項第3号イより引用)であることと規定されています。
これ以外のプロジェクトの場合は、3年ルールから除外されない可能性がありますので注意してください。

2-4.1ヶ月の勤務日数が通常の半分以下かつ10日以下の場合

また、派遣社員が従事している業務の日数が、1ヶ月のうち以下の両方に該当する場合も、3年ルールは適用外です。

  • 派遣先企業の通常の労働者の半分以下
  • 10日以下

これを「日数限定業務」と呼びます。
勘違いしがちなのは、この日数は「派遣社員が働いた日数」ではなく、「その業務が行われる日数」であるという点です。

たとえば、15日間行われる業務を、そのうち10日間は派遣社員に、残りの5日間は正社員に割り振ったとします。
その場合、「派遣社員が働いた日数=10日間」で判断するのではなく、「その業務が行われた日数=15日間」で判断しますので、日数限定業務にはあたらず、3年ルールの例外にはなりません。

あくまでその業務自体が1ヶ月のうち10日以内で、他の正社員などが働いている日数の半分以下である場合にのみ、3年を超えて働くことができますので注意してください。

2-5.産休・育休・介護休暇などの代用として派遣されている場合

5つめの例外は、派遣先企業の社員などが産休、育休、介護休暇をとった際に、その人が担当していた業務をかわりに行うために派遣された場合です。
このような、いわゆる「代替派遣」も、3年ルールが適用されないので、3年以上継続して働くことができます。

 

3.「派遣3年ルール」を免れる3つの抜け道

「派遣3年ルール」を免れる3つの抜け道

前章で、派遣3年ルールには適用されない例外のケースがあることを説明しましたが、中には「自分はこの例外には該当しないけれど、なんとかして3年を過ぎても同じ職場で働き続けたい」と考える方もいるでしょう。

そんな場合には、以下の3つの抜け道があります。

  • 無期雇用派遣に切り替えてもらう
  • 派遣先に直接雇用してもらう
  • 部署を異動する

それぞれ説明しましょう。

3-1.「派遣3年ルール」を免れる抜け道1 無期雇用派遣に切り替えてもらう

まずひとつは、「派遣会社に頼んで、有期雇用を無期雇用に切り替えてもらう」という方法があります。

「2-1.無期雇用契約を結んでいる場合」で説明しましたが、派遣会社と無期雇用契約を結んでいる派遣社員には、3年ルールは適用されません。
その決まりを利用して、有期雇用契約を無期雇用に変更してもらうのです。

こうすれば、派遣先企業が希望する限り、期限なく同じ条件、待遇で働き続けることができます。

また、無期雇用になれば、派遣先企業が契約更新をせずに満了した場合も、派遣会社との契約は続きます
もしすぐに次の派遣先が見つからなくても、その間は派遣会社が給与や休業手当などを支払ってくれるのです。

ただ、無期雇用といっても派遣社員であることにはかわりなく、「派遣会社の正社員になる」わけではありません。
そもそも派遣会社に頼んでも、無期雇用に切り替えてもらえない可能性もあることを心得ておいてください。

3-2.「派遣3年ルール」を免れる抜け道2 派遣先に直接雇用してもらう

前項の無期雇用の場合、派遣先企業が派遣契約を更新しなければ、その企業で働き続けることはできません。
そうではなく、「なんとかして今の派遣先の会社で働き続けたい」という場合は、派遣先に正社員や契約社員などとして直接雇用してもらうといいでしょう。

この場合は、派遣社員が直接交渉するのではなく、まず派遣会社に「直接雇用してほしい」と希望を出して、担当者に交渉してもらいます
雇用の条件や待遇についても、このときに派遣会社側が派遣先企業と話し合って決めますので、要望を事前に伝えておきましょう。

ただし、この場合もかならずしも派遣先が直接雇用してくれるとは限らず、断られる可能性があります。

また、雇用条件や待遇も希望通りにならないかもしれません。
が、「1-4.3年後には派遣会社から「雇用安定措置」がとられる」で説明したように、派遣会社には派遣社員の希望を聞いて、雇用の安定をはかる義務がありますので、遠慮せずに希望を伝えて交渉してもらいましょう。

3-3.「派遣3年ルール」を免れる抜け道3 部署を異動する

3つめの方法は、同じ派遣先企業でも別の部署に移ることです。

派遣3年ルールは、「同じ派遣先の同じ部署で続けて働けるのは最長3年」という決まりでした。
ということは、「同じ部署」でなくなればいいわけです。
たとえば、営業部で3年間働いていた派遣社員が、抵触日からは販売促進部に派遣されるようになれば、部署異動の時点で期限のカウントはリセットされて、また新たに3年間働けるようになります。

本来、労働者派遣法では、派遣社員の異動は原則的に禁じられています
ただ、派遣社員と派遣先企業の双方が同意していて、契約期間が満了した際には、新たに別の部署への派遣として契約し直すことで部署異動できるのです。

もし、「いまの派遣先で3年以上働き続けたいけれど、部署は変わってもいい」というのであれば、3年の期限が近づいた時点で派遣会社にその旨を相談して、別部署に派遣してもらえるか交渉してもらいましょう。

 

4.派遣3年ルールに関するよくある質問

派遣3年ルールに関するよくある質問
ここまで、派遣3年ルールについて知っておきたいことを説明してきました。
が、これ以外にも気になること、わからないことがあるという方も多いでしょう。
そこで最後に、派遣3年ルールについてよくある質問をまとめて回答しておきます。

4-1.「Q. 3年満了後にしばらく間をあければ、また同じ職場で派遣で働けますか?」

派遣社員が同じ職場で3年働き続けた際に、そのまま次の契約更新をすることはできませんが、いったん契約満了してその職場をやめ、しばらく間をあけたあとで再度その職場に派遣されることはできるでしょうか?

結論からいえば、それは可能です
3年満了した日から「3ヶ月と1日」経てば、同じ職場での勤続期間がリセットされ、またその職場で最長3年間まで派遣で働くことができるようになります。
この間の期間を「クーリング期間」と呼んでいます。

たとえば、2020年4月1日から2023年3月31日まで同じ職場で働いた派遣社員の場合、3月31日から3ヶ月と1日のクーリング期間を経て、2023年7月1日からならまた同じ職場で派遣として働くことが可能です。

ただし、派遣先企業がそれを受け入れてくれるとは限りません
派遣先としては、派遣社員がいなくなればその業務を誰かに担当してもらわなければなりません。
「3ヶ月待って、前の人にまた派遣で来てもらおう」と考えるより、すぐに別の派遣を入れたい企業は多いはずです。

ですので、3年以上同じ職場で働きたいのであれば、クーリング期間をはさんで復帰を試みるよりも、前章で挙げた無期雇用派遣や直接雇用などの方法でアプローチするほうがよいでしょう。

4-2.「Q. 3年満了前に、派遣社員が派遣元(=派遣会社)を変えれば、3年を超えても同じ職場で働き続けられますか?」

同じ派遣先企業の同じ部署で働いている派遣社員が、3年の期限が満了する前に派遣元を別の派遣会社に変更した場合は、その職場で3年以上働き続けることはできるでしょうか?

答えは「できない」です。
というのも、「1-2-1.個人に対する期間の制限」で説明したように、派遣社員個人が同じ職場で働ける期間が最長3年だからです。
その間に派遣会社が変わっても、「同じ派遣社員が」「同じ派遣先企業の」「同じ部署で」働き続けている限りは、3年ルールは適用されます。

 

5.まとめ

いかがでしたか?
派遣の3年ルールについて、よくわかったかと思います。

では最後にあらためて、要点をまとめておきましょう。

◎「派遣3年ルール」とは、「有期雇用の派遣社員が、同じ企業の同じ部署で働ける期間は最長で3年まで」という決まり

◎「派遣3年ルール」が適用されない5つのケースは、

  • 無期雇用契約を結んでいる場合
  • 60歳以上の場合
  • 有期プロジェクトに派遣されている場合
  • 1ヶ月の勤務日数が通常の半分以下かつ10日以下の場合
  • 産休・育休・介護休暇などの代用として派遣されている場合

◎「派遣3年ルール」を免れる3つの抜け道は、

  • 無期雇用派遣に切り替えてもらう
  • 派遣先に直接雇用してもらう
  • 部署を異動する

以上を踏まえて、あなたが気に入った派遣先に長く勤め続けられるよう願っています。