無期雇用派遣とは?制度内容、向いている人、なる方法まで詳しく解説

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無期雇用派遣とは?制度内容、向いている人、なる方法まで詳しく解説

「派遣の無期雇用って何?」
「無期雇用派遣になると、有期雇用と何が変わるの?」

派遣で働いていて、そんな疑問を持っている方も多いでしょう。

「無期雇用派遣」とは、派遣会社と期限を決めずに雇用契約を結び、派遣社員として派遣先で就業する契約形態です。
従来の「有期雇用派遣」とは異なり、派遣先で働いていない間も派遣会社との契約は続き、給与も途切れずに支払われるのが特徴です。

無期雇用派遣で働くメリット・デメリットには、以下のようなものがあります。

<メリット>

  • 待機期間中も給与がある
  • 昇給や賞与がある
  • 同じ職場、部署で長期に働ける
  • キャリアの形成、向上がはかれる

<デメリット>

  • 採用されない可能性がある
  • 派遣先を自由に変えられない

また、無期雇用になる方法には、以下の2つがあります。

  • 無期雇用派遣の求人に応募する
  • 「無期転換ルール」により有期雇用派遣から転換してもらう

無期雇用は有期雇用よりも収入が安定しますが、自由度が下がるデメリットもあるため、自分にはどちらが適しているかを適切に判断する必要があるでしょう。

そこでこの記事では、無期雇用派遣について知っておきたいことをまとめました。

  • 無期雇用派遣とは
  • 無期雇用派遣のメリット
  • 無期雇用派遣のデメリット
  • 無期雇用派遣が向いている人・向いていない人
  • 無期雇用派遣になる方法
  • 無期雇用派遣になる際の注意点

最後まで読めば、知りたいことがわかるでしょう。
この記事で、あなたが無期雇用になるかならないか、適切に判断できるよう願っています。

 

1.無期雇用派遣とは

無期雇用派遣とは

派遣には、3ヶ月、1年などの期間を決めて契約する一般的なものとは別に、「無期雇用」という形があります。
これはどのような働き方なのでしょうか?
ほかの派遣とどのように違うのでしょうか?

1-1.「無期雇用派遣」とは?

「無期雇用派遣」とは、派遣会社と期限を決めずに雇用契約を結んだ上で、派遣社員として派遣先で就業する働き方、契約形態です。

従来の派遣社員は、あらかじめ3ヶ月、1年など契約期間を決めて契約を結び、派遣先企業で働いていました。
が、2015年に労働者派遣法が改正され、その中で、より安定した働き方として生まれたのが「無期雇用派遣」です。

この場合、派遣先での就業が満了しても、派遣会社との契約は無期限に続いています
そのため、「次の派遣先が決まらない」といった待機期間が発生しても、これまでの期間を決めた派遣=「有期雇用派遣」とは異なり、給与が途切れずに発生します。
つまり、従来の派遣のデメリットである雇用の不安定さを感じることなく、安定して働ける派遣の形だと言えるでしょう。

1-2.「有期雇用派遣」「正社員」との違い

無期雇用派遣についてよく理解するために、従来の「有期雇用派遣」や「正社員」との違いを知るといいでしょう。
以下にそれぞれの比較をまとめましたので、見てください。

【無期雇用派遣と有期雇用派遣、正社員との違い】

無期雇用派遣と有期雇用派遣、正社員との違い

これを見てわかるように、無期雇用派遣の特徴は、「派遣でありながら、雇用と収入が安定していて長期的に働ける」という点にあります。

派遣会社と無期限の雇用契約を結び、派遣会社の福利厚生を利用することができ、ボーナスも出ます。
働き方はあくまで「派遣」ですので、派遣先企業で就業することにはなりますが、もし派遣先との契約が満了して次の派遣先が決まらない期間(=待機期間)が生じても、その間にも給与がもらえます。

となると、「正社員と同じでは?」と思われるかもしれませんが、そうとは言えません。

まず派遣先企業の正社員とは、そもそも雇用する企業が異なるので、待遇も就業規則もすべて違います。
また、派遣会社の正社員とも、同じ待遇になるわけではありません。
給与や賞与、各種手当なども異なり、正社員には及ばないケースが多いようです。

1-3.無期雇用派遣が「オススメできない」と言われる理由

そんな、メリットとデメリット両方がある無期雇用派遣ですが、インターネットで検索したり口コミを見たりすると、「オススメできない」「やめたほうがいい」といった意見も見受けられます。
それはなぜでしょうか?

いくつか理由はあるようですが、主に以下が挙げられます。

  • 派遣先社員との待遇の差を感じる
  • 派遣先を自由に選べなくなる

それぞれ説明します。

1-3-1.派遣先社員との待遇の差を感じる

無期雇用派遣になると、同じ職場で長期間働けるようになります。
有期雇用の派遣は、最長で3年間しか同じ職場で働けない「派遣3年ルール」がありますが、無期雇用の場合は派遣先企業が希望する限り、3年を超えて働くことが可能です。

が、長期間同じ職場で働いてることで、派遣先企業の社員との待遇の違いが目につくという人も多いようです。
たとえば、派遣先の業績が上がって社員には臨時ボーナスが出たとしても、派遣会社の所属である派遣社員にはもちろん支給されません。
昇給なども正社員ほどではないケースが多く、「同じ仕事をしているのに」と不満を感じる人もいるでしょう。

このようなことが積み重なると、仕事へのモチベーションが保てないということから、「無期雇用はオススメできない」と言われているようです。

1-3-2.無期雇用派遣は派遣先を自由に選べなくなる

有期雇用派遣で働くことのメリットのひとつに、「働き方が自由」ということがあります。
短期間の契約なので、派遣先企業やそこでの業務が自分に合わなければ、次の契約を更新せずに新しい派遣先を探して移ることが可能です。

が、無期雇用派遣になると、有期雇用派遣ほど自由には派遣先を選べなくなる可能性が高いのです。

というのも、無期雇用派遣社員には、派遣先がない待機期間中も給与が発生します。
派遣会社としては、その間は働いていないスタッフに給与を支払わなければならないわけで、それは避けたいでしょう。

そのため、なんとか派遣先を決めようとします。
もちろん無期雇用の派遣社員側も、派遣先の希望を出すことはできますが、給与をもらってしまっているために断りづらく、有期雇用ほど自由に選ぶことは難しいでしょう。
中には有期雇用派遣社員が行きたがらない、人気のない派遣先に無期雇用派遣社員を派遣するケースもあり、そのような職場を転々とさせられることもあるようです。

このようなことを避けるには、やはり派遣先での評価を高めて、「この人を使い続けたい」と思ってもらうことが必要でしょう。
そうなれば、派遣会社での評価も上がり、希望も聞いてもらいやすくなります。

 

2.無期雇用派遣のメリット

無期雇用派遣のメリット

無期雇用派遣がどのようなものか、よくわかったかと思います。
が、「結局、無期雇用と有期雇用のどっちがいいの?」と疑問に思った方も多いでしょう。
そこで、無期雇用派遣のメリットとデメリットを考えてみます。

まずはメリットからです。
主に以下の4点が挙げられます。

  • 待機期間中も給与がある
  • 昇給や賞与がある
  • 同じ職場、部署で長期に働ける
  • キャリアの形成、向上がはかれる

それぞれ説明しましょう。

2-1.無期雇用派遣のメリット1 待機期間中も給与がある

まず第一のメリットは、前述したように待機期間中も給与がもらえることでしょう。

無期雇用派遣社員は、派遣会社に常時雇用されています。
もし派遣先での就業期間が終わって、次の派遣先が決まらなくても、その間にも給与は発生します。
有期雇用の場合は、契約が終了して次の派遣先に就業するまでは収入はなくなりますので、この点が最大の違いです。

従来の派遣のデメリットは、雇用と収入が安定しないことでした。
無期雇用はその点を改善する働き方だと言えるでしょう。

2-2.無期雇用派遣のメリット2 昇給や賞与がある

また、無期雇用契約では一般的に、昇給があり賞与がもらえます
有期雇用派遣でも、時給がアップしたりボーナスがもらえたりするケースはありますが、特にボーナスについてはない場合が多いでしょう。
それに対して無期雇用の場合は、制度として定めた上で適正に支給されます。

勤務状態や派遣先での評価などを定期的に確認し、結果がよければ昇給されますし、派遣会社の業績に応じて賞与も決められますので、モチベーションも上がるでしょう。

2-3.無期雇用派遣のメリット3 同じ職場、部署で長期に働ける

同じ派遣先の同じ部署で、長期間働き続けられるのもメリットと言えます。

というのも、有期雇用派遣の場合、前述したように同じ職場・部署では最長3年までしか働けない「派遣3年ルール」というものがあり、勤続3年になると派遣先を退職するか、少なくとも部署異動はしなければなりません。
気に入っている職場で人間関係や信頼を築いていても、3年経てばまた別の場所で一からスタートしなければならないのは、人によっては大きなデメリットでしょう。

一方、無期雇用派遣には「3年ルール」は適用されません
派遣先が望めば、5年でも10年でも働き続けることが可能です。
スキルや経験の蓄積も期待でき、長期的なライフプランも立てやすいでしょう。

2-4.無期雇用派遣のメリット4 キャリアの形成、向上がはかれる

労働者派遣法では、派遣会社に対して派遣社員の「キャリア形成支援制度」を設けた上で、「キャリアアップに資する教育訓練」の計画を策定することが定められています。
中でも無期雇用派遣に対しては、長期的なキャリア形成を目指した教育訓練を行うことが求められているのです。

これにより、無期雇用派遣向けに研修やセミナーなどを充実させている派遣会社も多くあり、将来に向けてのキャリア形成、スキルアップをはかることが可能です。
派遣会社によっては、資格取得をサポートする制度もあります。

有期雇用派遣の場合、短期で派遣先を変わるため、キャリアの形成はしづらいですが、無期雇用ならそのデメリットは少ないでしょう。

 

3.無期雇用派遣のデメリット

無期雇用派遣のデメリット

一方で、無期雇用派遣には以下のようなデメリットもあります。

  • 採用されない可能性がある
  • 派遣先を自由に変えられない

それぞれ説明します。

3-1.無期雇用派遣のデメリット1 採用されない可能性がある

無期雇用派遣には、誰でもなれるわけではなく、基本的には採用選考を受けて契約に至ります。
一般的な企業の採用選考同様に、書類選考、面接を受ける必要があり、その結果、採用されない可能性も十分あります。

有期雇用派遣の場合は、派遣会社に登録して、マッチングする派遣先を紹介してもらうだけで、採用試験や面接はありません。
(事前の「職場見学」で面接して選考する派遣先企業もありますが、それは違法です。)
一方、無期雇用派遣社員は契約期間を定めずに雇用して、毎月給与を支払うのですから、能力や人柄などが派遣会社の求めるレベルに達している人を選ぶ必要があるのです。

もし、「正社員にはなれなかったけれど、無期雇用派遣ならなれそう」と考えているなら、そんなに簡単ではありません。
選考過程を通じて、能力やスキル、意欲などを見られるので、事前に十分な準備をしておく必要があるでしょう。

3-2.無期雇用派遣のデメリット2 派遣先を自由に変えられない

1-3-2.派遣先を自由に選べなくなるでも説明したように、無期雇用は、本来派遣のメリットであるはずの自由な働き方ができにくいものです。

派遣会社側は、無期雇用に待機期間ができると、働いていない人に給与を支払うことになるため、できるだけ間をあけずに次の派遣先に就業させようとします。
そのときに、無期雇用派遣社員が希望するような派遣案件があればいいですが、希望に合うものがなくても、どこかの派遣先で働かなければならなくなるでしょう。

言うなれば、雇用と収入の安定を得るかわりに、自由度が下がってしまうわけです。
無期雇用派遣になる際には、そのことをよく理解しておいてください。

 

4.無期雇用派遣が向いている人・向いていない人

無期雇用派遣が向いている人・向いていない人

では、無期雇用派遣が向いている、あるいは向いていないのはどんな人でしょうか?
それは以下のようなケースだと言えるでしょう。

<無期雇用派遣が向いている人>

  • 安定した仕事をしたいが、責任が重くなるのは避けたい人
  • 同じ職場で長期的に働いて、キャリア形成したい人
  • 未経験から転職したい人

<無期雇用派遣が向いていない人>

  • 自由に働きたい人

4-1.無期雇用派遣が向いている人

まず、無期雇用派遣が向いているのは、以下のような人です。

  • 安定した仕事をしたいが、責任が重くなるのは避けたい人
  • 同じ職場で長期的に働いて、キャリア形成したい人
  • 未経験から転職したい人

4-1-1.安定した仕事をしたいが、責任が重くなるのは避けたい人

無期雇用派遣は、有期雇用の派遣に比べて給与が毎月途切れずに支払われます。
一方、収入が安定しているからといって、責任が重くなるわけではありません。
あくまで「派遣社員」ですので、派遣先には労働力を提供し、契約で決められた業務を行うだけでいいことは、有期雇用と変わらないのです。

そのため、「安定した仕事がしたいけれど、責任ある仕事を任せられるのは荷が重い」という人には向いているでしょう。

4-1-2.同じ職場で長期的に働いて、キャリア形成したい人

2-4.キャリアの形成、向上がはかれるで説明したように、派遣会社は無期雇用派遣社員に対して長期的なキャリア形成をサポートする義務があります。
もし、「今は事情があって正社員では働けないけれど、キャリア形成やスキルアップはしたい」と思っている人には無期雇用が適しているでしょう。

無期雇用なら、派遣3年ルールもなく何年でも同じ職場で働くことができますので、経験と職歴を積むことも可能です。

4-1-3.未経験から転職したい人

「未経験だけれど、やってみたい仕事がある」という場合、正社員で採用されるハードルは高いでしょう。
多くの業種では、未経験者は新卒のみで、中途採用には経験者を求めがちです。

が、派遣社員としてなら、就業できる可能性は高まります。
その業種での正社員の採用試験よりも、派遣会社での無期雇用の採用選考のほうがハードルが低いためです。
まず派遣会社でその業種の無期雇用求人を探し、採用されれば就きたい仕事にたずさわれるでしょう。

4-2.無期雇用派遣が向いていない人

反対に、無期雇用が向いていないのは、以下のようなケースです。

  • 自由に働きたい人

前述したように、無期雇用になるとつねに働き続けることを求められるため、希望の派遣先がなくてもどこかで働かなければなりません。
また、好きなときに長期間休むこともできなくなります。

派遣ならではの自由な働き方を求める人には、無期雇用派遣は向かないでしょう。

 

5.無期雇用派遣になる方法

無期雇用派遣になる方法

ここまで読んで、「自分に向いているようなので、無期雇用になりたい」と考えた方も多いでしょう。
その場合、どうすれば無期雇用になれるのでしょうか?
その方法は2つです。

  • 無期雇用派遣の求人に応募する
  • 「無期転換ルール」により有期雇用派遣から転換してもらう

それぞれ説明します。

5-1.無期雇用派遣の求人に応募する

まず簡単なのは、派遣会社が出している無期雇用派遣の求人に応募することです。
求人サイトを検索すると、「無期雇用派遣」の求人が簡単に見つかります。
希望の業種、職種の無期雇用派遣を探して応募しましょう。

3-1.採用されない可能性があるで説明したように、無期雇用派遣の場合は有期雇用とは違って採用選考がありますが、採用されれば最初から無期雇用契約の派遣社員として、希望の派遣先に就業することができます。

もし採用されなかった場合は、また別の派遣会社で無期雇用に応募することができますので、あきらめずにチャレンジしてください。

5-2.「無期転換ルール」により有期雇用派遣から転換してもらう

もうひとつの方法は、「無期転換ルール」というルールを利用することです。
これは、有期雇用契約で働いた期間が通算5年を超えれば、派遣社員側の申し込みによって無期雇用に切り替えられるという決まりです。

無期転換の申し出は、5年経って権利が発生したあとで、派遣会社に口頭で伝えるだけでもかまいませんし、派遣会社に申し込みの書式があればそれを提出しましょう。
派遣社員から無期転換の申し出があれば、派遣会社は断ることができないので、かならず無期雇用になることができます。

この「5年」とは、以下のように考えます。

契約期間が1年の場合と3年の場合

出典:厚生労働省「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト

 

6.無期雇用派遣になる際の注意点

無期雇用派遣になる際の注意点

無期雇用派遣になる方法がわかりました。
が、実際になる前に、注意したいことがあります。
それは以下の2点です。

  • 待遇や条件を確認する
  • 研修制度を確認する

6-1.無期雇用派遣になる際の注意点1 待遇や条件を確認する

まず最初に、無期雇用になった場合の待遇や条件を派遣会社の担当者に確認して、納得できてから契約しましょう。

というのも、給与や賞与、就業条件などは派遣会社の規定に合わせるため、場合によっては有期雇用派遣よりも待遇が悪くなる可能性もあるからです。
たとえば、有期雇用で派遣先が出す時給分の給与よりも、派遣会社が決めた月給のほうが少なくなるかもしれません。

その他の福利厚生も確認してください。
有休などの休暇制度、昇給制度、各種手当などが充実していれば、無期雇用のメリットは大きいでしょう。

6-2.無期雇用派遣になる際の注意点2 研修制度を確認する

無期雇用のメリットのひとつは、キャリア形成やスキルアップがはかれることです。
といっても、研修制度や資格取得などのサポート制度は派遣会社によってまちまちです。

そのため、派遣会社のホームページを見たり、担当者にどんな制度があるか確認するなど、複数の派遣会社を比較して、なるべく研修制度が充実しているところを選ぶといいでしょう。

 

7.まとめ

いかがでしたか?
無期雇用派遣について、知りたいことがわかったかと思います。
では、あらためて記事の内容を振り返ってみましょう。

◎無期雇用派遣とは、派遣会社と期限を決めずに雇用契約を結び、派遣社員として派遣先で就業する契約形態

◎無期雇用派遣のメリットは、

  • 待機期間中も給与がある
  • 昇給や賞与がある
  • 同じ職場、部署で長期に働ける
  • キャリアの形成、向上がはかれる

◎無期雇用派遣のデメリットは、

  • 採用されない可能性がある
  • 派遣先を自由に変えられない

◎無期雇用派遣になる方法は、

  • 無期雇用派遣の求人に応募する
  • 「無期転換ルール」により有期雇用派遣から転換してもらう

◎無期雇用派遣になる際の注意点は、

  • 待遇や条件を確認する
  • 研修制度を確認する

これらを踏まえて、あなたが無期雇用になるかならないか、適切に判断できるよう願っています。