「派遣社員も健康診断を受けられるのかな?健康診断を受けられないような派遣会社は選びたくない」
「本当は健康診断を受けられるとしたら、このまま機会損失しているのは嫌だな……」
そのようなお悩みはありませんか?
結論からお伝えすると、派遣社員も健康診断を受けることができます。
ただし、派遣社員が健康診断を受けるには、それぞれの派遣会社が定めている一定の条件を満たさなければなりません。
一般的には、「1年以上の雇用契約があり、週に30時間以上の勤務がある」といったように、勤務年数・勤務時間を条件に定めているところが多いです。
例えば、下表は、ある派遣会社が定めている健康診断を受ける条件の例です。
【ある派遣社員が健康診断を受けられる条件の例】 | |
就業1年目 | 算定月(春または秋)の時点で、雇用契約が4.5ヶ月以上経過かつ、週30時間以上のご契約の方 |
就業2年目以降 | ご就業1年目と同時期(春夏健診または秋冬健診)に、週30時間以上のご契約の方 |
上記は1例ですが、このように、各派遣会社が定めている条件を満たせば、派遣社員も健康診断を受けることができます。
しかし、健康診断の条件まで考えて派遣先に入社することは少ないので、働き出してから「健康診断を受ける資格をもらうのに、勤務時間がたったの2時間足りなかった」と後で気づいでしまうケースも後を絶ちません。
自費で健康診断を受けるとなると、1万円~2万円ほどはかかってしまうので、できれば会社で受けたいですよね。
本当は受けられたはずの健康診断を受けられない、といった機会損失を防ぐために、この記事では以下のことを解説していきます。
【この記事で分かること】
- 派遣社員も条件をクリアすれば健康診断を受けられること
- 派遣社員が健康診断を受けられる条件の事例
- 派遣社員が健康診断を受けられなかった事例
- 派遣社員が健康診断を受ける流れ
- よくある質問まとめ
この記事を最後まで読むと、派遣社員が健康診断を受けられる条件や、会社の選び方・健康診断を受ける流れが良く分かり、安心して健康診断を受けることができるでしょう。
派遣社員が健康診断を受ける権利を持っているのかきっちりと確かめたいという方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.派遣社員も健康診断を受けられる
冒頭でも述べたように、派遣社員も健康診断が受けられます。ここでは、派遣社員が健康診断を受けられる権利について、確認していきましょう。
1-1.派遣社員の健康診断は法律により義務付けられている
派遣社員も健康診断を受けられます。
なぜなら事業所には、派遣社員へ健康診断を受診させることが、法律により義務付けられているからです。
労働安全衛生法の第66条・第44条には、以下のように記載されています。
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。
出典:【労働安全衛生法 第六十六条】
事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
出典:【労働安全衛生法 第四十四条】
このように、法律には労働者の健康を守る決まりがあるため、派遣社員も健康診断を受けられるのです。
定期健康診断で受診する項目についても、厚生労働省により以下のように定められています。
【定期健康診断の項目】
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長(※)、体重、腹囲(※)、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査(※)及び喀痰(かくたん)検査(※)
- 血圧の測定
- 血検査(血色素量及び赤血球数)(※)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)(※)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(※)
- 血糖検査(※)
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査(※)
※の項目は、受診者の年齢などを考慮のうえ、医師の判断により省略が可能とされているので、実施されないこともあります。
出典:厚生労働省
上表の項目は健康診断の内容に含まれています。人間ドックや乳がん検診など、他の検査もしたい場合は、オプションとして自費になるケースが多いです。
定期的に受ける健康診断の項目も厚生労働省により定められているため、上記の項目を必須で受ける必要があります。
1-2.派遣社員が受けられる健康診断は2種類ある
派遣社員が受けられる健康診断には、定期健康診断と特殊健康診断の2種類があります。
それぞれの違いは以下になります。
対象 | 実施時期 | 費用負担先 | |
定期健康診断 | 常時使用するすべての労働者 | 1年に1回 | 派遣元 |
特殊健康診断(※) | 労働安全衛生法で定められた | 配置換えの際、6ヶ月に1回 | 派遣先 |
※特殊健康診断が実施される職種には、【高気圧業務・放射線業務・特定化学物質業務・石綿業務・鉛業務・四アルキル鉛業務・有機溶剤業務】があります。
つまり、一般的な職種で働いている人に対しては、1年に1回の定期健康診断を実施します。
さらに、危険であるとされる職種で働いている人は、追加で半年に1回の健康診断を行う必要があるのです。
1-3.派遣社員が健康診断を受けるには、各派遣会社の定める条件を満たす必要がある
派遣社員が健康診断を受けるには、各派遣会社の定める条件を満たす必要があります。
先ほど紹介した労働安全衛生法 第44条において、事業者が労働者への健康診断を義務付けられているのは、常時使用する労働者が対象だからです。
事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
出典:【労働安全衛生法 第四十四条】
派遣社員の中には、正社員と同じくフルタイムで働く場合もいれば、週2回など勤務の少ない場合もあります。週2回勤務など勤務の少ない方は、常時使用する労働者とは言えないですよね。
そのため、派遣会社は健康診断を受けられる社員の条件を定めており、その条件を満たした場合に限り、健康診断を受けることができるのです。
具体的な条件については、詳しくは次章をご覧ください。
2.派遣社員が健康診断を受けられる条件【派遣会社の事例別】
派遣社員が健康診断を受けるための条件は、どういったものがあるか、具体的に確認しましょう。
2-1.【事例1】派遣会社A社の健康診断を受けられる条件
【事例1|派遣社員が健康診断を受けられる条件】 | |
対象者 | 【就業1年目】 【就業2年目以降】 |
検査内容 | 要問い合わせ |
費用 | 基本の健診(定期健康診断)は無料 |
就業1年目と就業2年目以降で健康診断を受ける条件が異なり、就業1年目は条件が厳しめに設定されています。費用は基本の検診は無料です。
2-2.【事例2】派遣会社B社の健康診断を受けられる条件
【事例2|派遣社員が健康診断を受けられる条件】 | |
対象者 | 【協会健保被保険者の方】
【夜勤がある方】
|
検査内容 | 要問い合わせ |
費用 | 基本の健診(定期健康診断)は無料 |
こちらの会社では、協会健保被保険者の場合や、夜勤がある場合が対象になっています。費用は基本の検診は無料です。
2-3.【事例3】派遣会社C社の健康診断を受けられる条件
【事例3|派遣社員が健康診断を受けられる条件】 | |
対象者 | 【下記すべてに該当する方】
|
検査内容 | 35歳以上:協会けんぽ生活習慣病一般健診 34歳未満:法定健診 |
費用 | 費用 |
こちらの会社では、例えば「週の所定労働時間が30時間以上の方」とすることで、アルバイトや短時間勤務の方には健康診断費用を負担しないようにしていると考えられます。条件に合致していれば、費用は基本の検診は無料です。
このように、各事業所によって健康診断を受けられる条件は違います。そのため、派遣元の会社に、条件を確認してみることをおすすめします。
費用は基本的な健康診断は無料、ただしオプションを付けるなら、その分は有料になるケースが多いです。なお、これらは正社員も同様です。
ウェブサイトでは、健康診断を受けられる条件や対象項目などまで詳しく公表している会社は少ないので、電話して問い合わせするのが確実です。
3.派遣社員が条件を満たせず健康診断を受けられなかった事例
ここまでで、条件をきちんと満たせば、派遣社員も健康診断を受けられることがお分かりいただけたかと思います。
とはいえ、健康診断を受けられる条件は各派遣会社によって異なるので、その条件が厳しいと結果的に健康診断を受けられないこともあります。
【条件に少し満たず、健康診断を受けられなかった事例】
派遣社員として、1日7時間・週4日働いている。会社の健康保険に加入しているが、会社の健康診断を受ける条件は週に30時間以上なので、2時間足りず受けられない。
会社の健康保険に入っているため、自治体の健康診断も受けられない。
同じ会社で別の派遣会社から来ている同僚は、自分と同じ勤務状況なのに派遣元会社の健康診断を受けることができているため、やるせない。
上表の事例では、同じ派遣先で同じ勤務時間働いていたとしても、派遣元の会社によって健康診断の受診可否が変わっています。
派遣元会社が違うというだけで、自分だけ健康診断を受けられないのは、不公平に感じますよね。
健康診断の有無を重視する方は、派遣会社選びに力を入れて、事前に確認してから入社しましょう。
4.派遣社員が健康診断を受ける流れ【4ステップ】
ここでは、派遣社員が健康診断を受ける流れについて解説していきます。
健康診断は、次の4つのステップで受けることができます。
それぞれ見ていきましょう。
4-1.派遣会社から健康診断の案内が届く
まずは、健康診断の受診対象者に派遣会社から案内が届きます。
案内は、手紙やメールなど、派遣会社によっても案内方法が異なります。健康診断が行われる時期も、春や秋が多いですが、会社によって異なります。
不安な方は、派遣元の会社に確認してみましょう。
4-2.受診するコースや病院を選び、健康診断を予約する
案内が届いたら、受診できるコースや病院を選び、予約していきます。
予約は、
- 派遣会社のWeb予約システムで予約する
- 直接電話をかける
などといった方法があります。送られた案内に沿って予約していきましょう。
受診できるコースは、無料の定期健診内容が基本ですが、人間ドックや乳がん・子宮がん検診などは、オプションで自費というケースが多いです。
派遣会社が補償する項目を確認しながら、自分が受けたいコースを選びましょう。
【健康診断は休みの日を使って受けることが多いが、最近は勤務中に受けられる場合もある】
派遣社員の方が健康診断を受ける日は、基本的に休みの日や有休を使って行く場合が多いです。
しかし最近は、派遣社員の労働条件を改善する決まりが定められたことにより、勤務時間に健康診断を受けられる場合もあります。こちらについては、詳しくは次章の「5-1.健康診断を受けている間の時給は発生する?」をご覧ください。
4-3.健康診断を受ける
予約ができたら、当日、健康診断を受けます。
健康診断を受ける際は、当日一旦費用を建て替えておく必要があるかどうかを確認しておきましょう。
派遣会社の負担で、無料で健康診断を受ける場合でも、受診時は医療機関から健康診断の費用を求められる場合があります。
このような場合は、一度派遣社員が自分で支払って、後日その健康診断の費用が、加入している健康保険組合などから振り込まれます。
健康診断の費用を、いったん建て替えておく必要があるかどうかは、各派遣会社によっても異なります。
気になる方は、あらかじめ派遣元の会社に確認しておきましょう。
4-4.病院から診断結果が送られる
健康診断の結果は、後日、郵送で送られるか、派遣先の会社で手渡されます。
派遣会社によっては健康状態の把握のため、健康診断の結果の提出を求められる場合があるので、その場合は提出するようにしましょう。
5.派遣社員の健康診断に関するよくある質問Q&A
ここでは、派遣社員が健康診断に関する、よくある質問について答えていきます。
よくある質問は以下の4つです。
【派遣社員の健康診断に関するよくある質問】
- 健康診断を受けている間の給与は発生する?
- 派遣先で休みが取れない場合はどうすればいい?
- 病院への交通費はもらえる?
- 扶養家族も受けられる?
それぞれ確認してみましょう。
5-1.健康診断を受けている間の給与は発生する?
「健康診断を受けている間の給与は発生するの?」という質問がよくありますが、結論としては、給与が発生するケースと発生しないケースがあります。
- 特殊健康診断 …給与発生する
- 一般的な健康診断 …事業所によるので、確認が必要
特殊な作業を行っている方が受診する「特殊健康診断」は、勤務時間内の受診となっているため、給与が発生します。
一方で、それ以外の一般的な職種の場合は、給与は発生しないケースが多いです。その場合は有給や休みの日に健康診断を受けることになります。
なお、近年は一般的な職種の派遣社員であっても、健康診断を勤務中に受けられる会社が増えてきました。
2020年4月に働き方改革の一環として、派遣社員の不合理な待遇をなくすための措置として、国から「同一労働同一賃金」が施行されたためです。
出典:厚生労働省|を元に強調部分を編集
この制定により、「正社員は勤務中に健康診断に行けるが、派遣社員は休みの日に健康診断に行かないといけない」といった待遇差をなくし、派遣社員も勤務中に健康診断に行けるようになったのです。
そうはいっても、すべての派遣社員が健康診断の間も給与がもらえる訳ではなく、各派遣会社によって異なります。ぜひ、派遣元の担当者の方に確認してみてください。
5-2.派遣先で休みが取れない場合はどうすればいい?
派遣先で休みが取れず、健康診断を受けられないと困っている方もよくいらっしゃいます。
平日フルタイムで働いていると、休みを取って健康診断に行かなければなりませんが、なかなか休みが取れないというケースがあるようです。
その場合は、派遣元会社の担当者に相談しましょう。
派遣社員へ健康診断を受けさせる義務があるのは、派遣元の企業です。派遣元の担当者さんに相談することで、派遣先へ健康診断の受診を促してくれます。
「1.派遣社員も健康診断は受けられる」にて解説したように、労働安全衛生法により、事業者は労働者に健康診断を受診させることが義務付けられています。
また、厚生労働省から派遣先へ向けた労働条件のパンフレットの中でも、派遣社員へ健康診断を受けさせることが述べられています。
出典:厚生労働省「派遣労働者の労働条件・安全衛生の確保のために」を元に強調部分を編集
もし派遣元企業も、健康診断を受診させてもらえない場合、法律違反となりますので、労働基準監督署へ相談しましょう。
5-3.病院への交通費はもらえる?
健康診断のための病院への交通費は支給されないケースが多いです。
しかし、先ほど述べたように、「同一労働同一賃金」により、派遣社員も健康診断の受診の間も給与が発生する場合があることから、交通費を支給される可能性もあります。
健康診断時の交通費の有無についても、派遣会社の担当者の方に確認してみましょう。
会社の健康診断を受けられる病院は、指定されている場合が多いですが、交通費を抑えたい方はできるだけ自宅から近い場所を選ぶようにしましょう。
5-4.扶養家族も受けられる?
扶養家族の健康診断の受診有無は、派遣会社によって受けられる場合と受けられない場合があります。
各派遣会社や派遣会社の加入している福利厚生によって異なるからです。
したがって、扶養家族の健康診断の有無は派遣元の担当者の方に確認してみましょう。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか?
派遣社員も健康診断が受けられるかどうか、受けるにはどうすればよいか理解できたかと思います。
最後にこの記事をまとめますと、
- 派遣社員も、各派遣会社の定める条件を満たせば、健康診断を受けられる
- 健康診断を受けられる条件として、勤務年数や勤務時間を定めている場合が多い
- 健康診断の有無を重視する場合は、派遣会社選びや働く時間に注意しよう
この記事をもとに、あなたが派遣社員として健康診断を受けられることを願っています。
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