派遣社員の有給休暇について、「取得できないのではないか」「取ろうとするとトラブルになりそう」などのイメージを持っている方は多いでしょう。
派遣でも、有給休暇は取得できます。有給休暇の取得は法律上の権利であるため、付与された有給休暇については、気兼ねせず取得して何の問題もありません。
ただし、スムーズに取得するには、自身の有給休暇の付与状況や残日数がどうなっているのか正しく把握するとともに、有給休暇取得の基本的な流れを押さえておくことが大切です。
また、トラブルなく有給休暇を取得するには、トラブルにならないためのポイントを把握し、周囲に適切な配慮をする必要があるでしょう。
この記事では、派遣の有給休暇について、付与条件や日数といった基礎知識・取得するときの基本的な流れなど、スムーズに有給休暇を利用する上で必須の知識を解説します。
【この記事の内容】
- 派遣社員にも有給休暇は付与される
- 派遣必見!有給休暇の基礎知識3つ
- 派遣で有給休暇を取るときの基本的な流れ
- 有給休暇の取得でトラブルにならないためのポイント3つ
後半では、有給休暇の取得でトラブルにならないためのポイントについても、わかりやすくご紹介しますので、「トラブルが心配」という方は必ずチェックしておきましょう。
今回ご紹介する内容を確認しておけば、派遣の有給休暇について基本的なことを理解し、有給休暇を思い通りに活用できるようになるでしょう。
有給休暇を有効利用することで、ワークライフバランスを実現し、心身ともに健康で仕事を続けられるようになりましょう。
目次
1. 派遣社員にも有給休暇は付与される
派遣社員にも、有給休暇は付与されます。
有給休暇の取得は法律上の権利であるため、付与された有給休暇については、気兼ねせず取得して何の問題もありません。有給休暇が発生した以上、正社員・派遣社員の区別なく、消化することは労働基準法上、権利として認められているからです。
ただし、派遣先ではなく派遣元から有給休暇が付与されるので、有給休暇の取得申請は派遣元に出す必要があります。派遣先に申請するわけではない点に、注意しましょう。
なお、有給休暇を付与されるには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
◆有給休暇が付与される条件
- 雇用されてから継続して6ヶ月以上、勤務している
- すべての労働日のうち8割以上、出勤している
派遣の場合、有給休暇は派遣元で発生するので、「継続して6ヶ月以上勤務」の6ヶ月は、派遣元が変わらなければ通算することができます。
例えば、A会社に3ヶ月派遣されて、その後すぐにB会社に3ヶ月以上派遣されれば、通算すると6ヶ月以上勤務しているので有給休暇が発生するということです。
そもそも、付与されていなければ、有給休暇は取れません。
自分の付与タイミングはいつになるのかを把握し、計画的な取得を心がけましょう。
2. 派遣必見!有給休暇の基礎知識3つ
有給休暇をスムーズに取るには、「そもそも自分が何日の有給休暇を持っていて、いつまで使うことができるのか」を、正確に把握しておくことが重要になります。
派遣社員が有給休暇をスムーズに取得するために、最低限押さえるべき基礎知識は、次の3つです。
【派遣必見!有給休暇の基礎知識3つ】
- 年次有給休暇の日数は勤続年数などで変わる
- 派遣先が変わっても持ち越しできる
- 労使協定の締結があれば時間単位の取得も可能
順番に、内容を確認してみましょう。
2-1. 年次有給休暇の日数は勤続年数などで変わる
有給休暇の付与日数は、継続勤務年数と週所定労働日数で変わります。
週所定労働時間が30時間以上の一般的な労働者の場合、勤続年数6ヶ月のときは有給休暇の付与日数は10日ですが、勤続年数が6年半を経過したところで、最大の20日になります。
週所定労働時間が30時間以上の一般的な労働者における勤続年数ごとの有給休暇の付与日数 | |
勤続年数 | 有給休暇の付与日数 |
6ヶ月 | 10日 |
1年半 | 11日 |
2年半 | 12日 |
3年半 | 14日 |
4年半 | 16日 |
5年半 | 18日 |
6年半以降 | 20日 |
※参考:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」
また、週所定労働日数が4日以下で、かつ週所定労働時間が30時間未満の場合、付与日数は少なくなります。
週所定労働時間が30時間未満の場合における勤続年数ごとの有給休暇の付与日数 | ||
週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 勤続年数ごとの有給休暇の付与日数 |
4日 | 169日~216日 | 【6ヶ月】7日 【1年半】8日 【2年半】9日 【3年半】10日 【4年半】12日 【5年半】13日 【6年半以降】15日 |
3日 | 121日~168日 | 【6ヶ月】5日 【1年半】6日 【2年半】6日 【3年半】8日 【4年半】9日 【5年半】10日 【6年半以降】11日 |
2日 | 73日~120日 | 【6ヶ月】3日 【1年半】4日 【2年半】4日 【3年半】5日 【4年半】6日 【5年半】6日 【6年半以降】7日 |
1日 | 48日~72日 | 【6ヶ月】1日 【1年半】2日 【2年半】2日 【3年半】2日 【4年半】3日 【5年半】3日 【6年半以降】3日 |
※参考:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」
自分の勤務シフトに照らし合わせて、どのタイミングで何日の有給休暇が付与されるのか、確認しておきましょう。
2-2. 派遣先が変わっても持ち越しできる
派遣社員の場合、派遣先が変わっても派遣元が変わらなければ、付与された有給休暇は持ち越せます。
派遣社員に特有の、有給休暇が消えるタイミングは、次の派遣先が決まるまでの空白期間が1ヶ月超の場合です。
派遣先が変更になるときに、空白期間が1ヶ月を超えると、有給休暇の付与条件である継続勤務の条件を満たせなくなるからです。
仮に1ヶ月超の空白期間があると、有給休暇について、以下の2つのデメリットがあります。
◆1ヶ月超の空白期間のデメリット2つ
- 前の派遣先で発生した有給休暇が消滅する
- 有給休暇の付与日数の基準となる勤続年数がリセットされる
勤続年数がリセットされると、例えば週所定労働時間が30時間以上の場合、有給休暇の付与日数は10日に戻ってしまいます。
なお、有給休暇などが消えてしまう空白期間は、派遣元によって異なることを覚えておきましょう。次の派遣先が決まるまでの空白期間を、1ヶ月超と設定している企業もあれば、3ヶ月超としている企業などもあります。
派遣元の担当者などに、空白期間を何ヶ月に設定しているのか、事前に確認しておくとよいでしょう。
2-3. 労使協定の締結があれば時間単位の取得も可能
有給休暇は1日単位で取得するのが原則ですが、労使協定の締結があれば、例外的に年5日の範囲内なら、時間単位で取得することもできます。
業務の都合上、丸1日休むのは難しくても、半日から数時間程度なら休めるという場合は多いでしょう。有給休暇を有効利用するためにも、労使協定に定めがあるなら、積極的に活用するのがおすすめです。
3. 派遣で有給休暇を取るときの基本的な流れ
派遣で有給休暇を取得するための基本的な流れを押さえておくことで、スムーズに休みを取ることができます。一般的な流れは、以下のとおりです。
派遣で有給休暇を取るときの基本的な流れ |
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ここでは、各段階の具体的な内容を順番に説明しますので、確認しておきましょう。
3-1. 【派遣で有給休暇を取るときの基本的な流れSTEP1】事前に有給休暇の状況を把握する
有給休暇の取得に向けて動き出す前に必ずやっておくべきことが、有給休暇の状況確認です。具体的には、以下の2つを必ず把握しておきましょう。
【事前に把握すべき有給休暇の状況】
- 残日数は何日か?
- 時間休や半休も取得可能か?
残日数が正しく把握できていないと、休むつもりで計画を立てていたら休めないというケースや、知らずに有給休暇を取得しないまま勤務期間が終わってしまうといったケースが、出てしまいます。
また、有給休暇取得の単位が1日のみか、半日や時間単位も可能か、によって使いどころも変わってきます。最大限有効利用するには、「どういう取り方が可能なのか」まで調べておきましょう。
なお、有給休暇の残日数や取得の単位は、派遣会社の担当者に確認するか、派遣会社のマイページがある場合はサイトを閲覧することで調べられます。一度、確認しておきましょう。
3-2. 【派遣で有給休暇を取るときの基本的な流れSTEP2】派遣先に相談する
有給休暇を取る場合は、申請を出す前に、派遣先の上司や先輩・同僚などに早めに相談し、スケジュール調整をしましょう。「早め」とは、少なくとも2週間程度前がよいでしょう。
有給休暇を取る期間は、派遣先の業務を引き継ぐ必要性が出てくるからです。前もって相談しておくことで、派遣先企業側も、業務の割り振りや進め方を変更する、必要な資料や情報を事前に依頼しておくといったことができるようになります。
派遣先と摩擦を起こさず、スムーズに休暇を取るためにも、早めの相談を心がけましょう。
3-3. 【派遣で有給休暇を取るときの基本的な流れSTEP3】派遣元に申請する
有給休暇の申請は、派遣会社に対して行いましょう。
申請方法は、マイページから、もしくは担当者に直接連絡し、有給を取得することになります。具体的な申請方法は派遣会社によって異なるので、あらかじめ派遣会社の担当者に確認しておくと安心です。
申請後は、何日申請したか控え、残日数を自分でも管理しておきましょう。まれにシステムに取得状況が反映されず、残日数が誤っている場合があるためです。
4. 派遣の有給休暇の取得でトラブルにならないためのポイント3つ
有給休暇の取得でトラブルにならないためには、派遣先の職場に対する配慮が大切です。
具体的には、以下のようなポイントを押さえておくと、トラブルに発展するリスクを大幅に減らせます。
有給休暇の取得でトラブルにならないためのポイント3つ |
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それぞれ、どういうところがポイントとなるのか、以下で説明します。内容を確認し、実践してみましょう。
4-1. 有給休暇取得中も連絡がとれるようにする
有給休暇取得中であっても、職場からの連絡があった場合は、対応できるようにしておくのがおすすめです。
具体的には、職場から連絡がある可能性がある電話やメールなどは、休暇中でもチェックできるようにしておきましょう。また、できる限り1~2時間に1度程度は着信の有無などを確認すると対応しやすくなります。
緊急時や大きなトラブルが起きた際は、お休み中であっても、対応しないと損害が大きくなるリスクがあるからです。有給休暇が終われば、また同じ職場で仕事をするのですから、対応すれば最小限に抑えられた被害を大きくして不興を買うのは得策ではありません。
とは言え、お休み中に職場から何度も連絡が来るのは避けたいですよね。早めに派遣先と有給取得について相談し、データやマニュアルなどもわかるように共有・引継ぎしておくことで、連絡の機会は最小限に減らせます。
それでも連絡が来たら、きちんと対応をしましょう。
4-2. 繁忙期は避ける
有給休暇を取得するときは、職場の繁忙期を避けることが、トラブルを回避する上で重要です。
繁忙期は処理すべき業務量が多く、1人でも従業員が欠けると業務が進まないばかりか、関係する他の担当者や部署の仕事まで止まってしまう危険性があるためです。
有給休暇の取得は権利なので、いつ取っても自由ではありますが、トラブルを避けるという点では、あえて繁忙期に休むのは避けたほうが無難です。
それでも、どうしても休みたい日と繁忙期が重なってしまう場合は、自分の担当範囲の業務はきちんと終わらせる前提で、できるだけ早めに派遣先の上司などに相談してみましょう。
4-3. 有給休暇取得後は一言挨拶する
有給休暇取得後は、業務上関係のある上司や同僚などに、一言「お休みをいただき、ありがとうございました」などと挨拶しておくと、トラブルのリスクをぐっと抑えられます。
有給休暇取得は権利でお互いさまとは言え、休んでいる間のフォローを誰かにしてもらっていることが多いからです。
一言、感謝の気持ちを伝えておくだけで周囲の印象もよくなり、次回有給休暇を取るときにも一層スムーズに受け入れられやすくなります。
5. まとめ
派遣社員も、有給休暇は取れます。
有給休暇を付与されるには、以下の2つの条件を満たすことが必要です。
◆有給休暇が付与される条件
- 雇用されてから継続して6ヶ月以上、勤務している
- すべての労働日のうち8割以上、出勤している
有給休暇をスムーズに取るには、「そもそも自分が何日の有給休暇を持っていて、いつまで使うことができるのか」を、正確に把握しておくことが重要になります。
派遣社員が有給休暇をスムーズに取得するために、最低限押さえるべき基礎知識は、次の3つです。
【派遣必見!有給休暇の基礎知識3つ】
- 年次有給休暇の日数は勤続年数などで変わる
- 派遣先が変わっても持ち越しできる
- 労使協定の締結があれば時間単位の取得も可能
派遣で有給休暇を取るときの基本的な流れは、以下のとおりです。
派遣で有給休暇を取るときの基本的な流れ |
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有給休暇を有効利用することでワークライフバランスを実現し、心身ともに健康で仕事を続けられます。
「派遣社員は有給休暇を取りにくいのではないか?」と不安な方は、今回ご紹介した内容を実践し、スムーズに有給休暇を取得してみてください。
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