「建設設備ってどんな仕事をする業界?」
今この記事を読んでいるあなたは、将来どんな仕事に就こうかとさまざまな業界をリサーチしている中で、初めて建設設備業界と出会い興味を持ったのではないでしょうか。
建設設備の業界を一言でお伝えすると、建設業の一部で、建設物の設備工事を請負う業界です。
建設設備は、正確には建設業の中の設備工事に当たります。設備工事とは、下記のような工事に関わる業界です。
- 電気
- ガス
- 水道
- 空調設備 など
設備工事には、主に次のような職種があります。
業種 | 主な職種 |
設備工事業 | ①電気工事 |
一言で設備工事と言っても、さまざまな職種が関わっていることがお分かりになるかと思います。
それぞれに専門性があり、仕事内容や働き方、適性などが異なります。これまで自分とは縁がないと感じていた建設設備の業界も、深く知ればあなたにとって魅力的で適職であるかもしれません。
そこでこの記事では次のポイントについて解説していきます。
▼この記事のポイント
◎建設設備の業界とは
◎建設設備業界の職種
◎建設設備業界の働き方
◎建設設備の業界で働くために必要な資格
◎建設設備の業界が向いている人
この記事を最後までお読みになれば、これまで知らなかった建設設備業界について幅広く理解し、自分に向いているかどうかを知ることができます。
あなたの就活における業界選びをサポートし、将来の可能性が大きく広がることを願っています。
目次
1.建設設備は「建設業の一部で建設物の設備工事を請負う」業界
冒頭でもお話した通り、建設設備の業界とは建設業の一部で、建設物の設備工事を請負う業界です。
正確には建設設備の工事を「設備工事」と言い、建物の快適性を高めたりインフラを整える仕事を行います。
分かりやすいように、建設設備業界のイメージをイラストで見てみましょう。
建設設備の業界は主に電気工事と管工事に分かれ、電気、ガス、水道、空調設備などを設置したりメンテナンスを行います。
つまり、建設設備の業界とは、私たちが建物の中で快適に過ごすためのインフラの部分を整える、なくてはならない業界なのです。
2.建設設備の業界を支える「設備工事」の種類4つ
先ほどのお話にもあった通り、建設設備の工事のことを業界では設備工事と言います。
設備工事には具体的にどのような仕事の種類があるのかを説明していきましょう。大きく分けると、次の4つです。
設備工事の主な仕事の種類4つ |
①電気工事 |
このように、建物の見えない部分から見える部分まで、幅広い範囲の工事を担うのが設備工事の仕事です。
それぞれについて詳しく説明していきますので、設備工事業界ではどんな仕事をするのか、具体的に知っていきましょう。
2-1.電気工事
電気工事は、大きく2つに分けられます。建設工事としての電気工事と、電気保安に関する電気工事です。
それぞれの仕事内容について、次の表をご覧ください。
種類 | 仕事内容 |
建設工事としての電気工事 |
|
電気保安に関する |
※電気工事士でなければ行うことができない |
上の表にもあるように、電気工事の大半は「建設工事としての電気工事」が占めています。
「建設工事としての電気工事」は電気を建物まで引っ張ってきたり、建物の中で安全・安定に電気を使用できるようにするために行う工事を行います。
電気保安に関する工事とは、一般用電気工作物、または電気を送電、発電する機械や鉄道、発電所、貯水池、電線路などの自家用電気工作物を設置する工事のことです。
新設工事のほかメンテナンスなど、電気工事士でなければ行うことができません。
2-2.電気通信工事
電気通信工事は、電気工事と名前こそ似ていますが仕事内容は全く違います。
電気通信工事を一言で説明すると、情報通信設備に関する工事のことです。
具体的には、建物の中で情報を伝達する設備である電話やテレビ、インターネット、インターフォンなどの工事を請け負っています。
一般家庭の場合は、ネット回線や電話回線工事のことを指します。具体的な仕事内容は、次の通りです。
電気通信工事の仕事内容 |
|
このように、電気通信工事とはネット回線や電話回線をつないで使えるようにする工事で、電気工事とは違い、回線の工事がメインなのです。
2-3.管工事
管工事とは、建物の中でガスや水、空調設備を使えるように管を通し、必要な機械装置を設置する仕事です。
主に、ガスや給排水、空調、冷暖房設備などの工事を行います。
管工事の仕事内容 |
|
管工事は主に建物の床下や基礎の上で行われるため、ほとんどが目に見えない部分の工事になります。
目立つ仕事ではありませんが、「水が出る」「ガスを使える」「適温の部屋で過ごせる」と言った、当たり前で快適な暮らしには欠かせない仕事なのです。
2-4.機械器具設置工事
機械器具設置工事とは、建設現場において機械器具の組み立てや取り付けを行なう工事のことを言います。
具体的な工事内容は次の通りです。
機械器具設置工事の仕事内容 |
|
機械器具設置工事は、機械の移動や撤去、取り付けなど、設備工事の中でも比較的大規模な工事が多いです。
規模が大きくなるので、他業種の人や職人との連携がより重要になります。
3.建設設備の業界の月給・年収
設備工事業界の仕事内容を理解できたら、次は「どのくらい稼げるのか」という点が気になりますよね。
この章では、設備工事業界の月給と年収について解説していきます。
収入は職種によっても変わってきます。下記の項目に分けて、詳しくお話ししていきましょう。
- 業界全体の平均月給、年収
- 職種別の平均月給、年収
3-1.建設設備業界全体の平均月給・年収
まず、建設設備業界全体の平均月給、年収についてお話しします。
参考:求人ボックス「給料ナビ」を元に作成
設備工事の平均年収は約415万円で、月給に換算すると約35万円です。(出典:求人ボックス「給料ナビ」)
建設業全体の平均年収(給与のみ)は約510万円なので、設備工事の平均年収は建設業の中では低めの収入になります。(出典:国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査結果」)
ただ、建設設備業界の年収を全体的に見てみると、年収は300万円程度〜750万円程度と幅広いです。
資格を取得したり経験を積むと年収は大きく上がるため、職種や経験、年齢、企業規模によって変わってくると言えます。
3-2.建設設備業界の職種別の平均月給・年収
建設設備業界の年収は、職種によっても変わります。より具体的な収入を知るために、職種別で平均月給と年収を見ていきましょう。
今回は、「2.建設設備の業界を支える仕事の種類は主に4つ」でお話しした建設設備業界の主な4つの職種別に収入を解説していきます。
参考:厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」を元に作成
4つの職種は有資格者が多いので、資格を取るとどのくらいの収入を得られるのかの目安にもなるでしょう。
3-2-1.電気工事
電気工事に関わる職種のうち、電気工事士の年収を見ていきましょう。
参考:厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」を元に作成
電気工事士の平均年収は511.3万円(平均年齢41.9歳)です。また、求人賃金(月額)は平均で26万円となっています。
設備工事全体の平均年収が415万円なので、業界の中でも高収入な職種だと言えます。
3-2-2.電気通信工事
電気通信工事に携わる、電気通信技術者の年収を見ていきましょう。
参考:厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」を元に作成
上の図にある通り、電気通信技術者の平均年収は558.8万円(平均年齢41歳)となり、電気工事士よりも高い年収です。また、求人賃金(月額)は平均で31.4万円となっています。
こちらも、設備工事業界の平均年収より高くなっています。
3-2-3.管工事
管工事の一種である配管工事を行う、配管工の年収を見てみましょう。
参考:厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」を元に作成
配管工の平均年収は471.2万円(平均年齢43.6歳)です。また、求人賃金(月額)は平均で26.3万円となっています。
先ほど説明した電気工事士、電気通信技術者よりは低いものの、設備工事全体の平均よりは高い結果になりました。
3-2-4.機械器具設置工事
機械器具設置工事での有資格である技術者の平均年収を見てみましょう。
参考:厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」を元に作成
技術者になると、平均586.2万円(平均年齢42.6歳)、求人賃金(月額)は平均で31.5万円となっています。
機械器具設置工事は設備工事の中でも規模が大きいため、知識や経験がより求められます。そのため、有資格者である技術者の年収も高くなるのです。
ここまでのお話をまとめると、建設設備の業界の収入は平均年収の場合は建設業全体より低いものの、電気工事士など有資格者の場合は建設業の平均よりも高い年収となります。
4.建設設備の業界の働き方
年収の次に知っておきたいのが、建設設備業界の働き方についてではないでしょうか。この記事を読んでいるあなたは、
「忙しそうだけど、ちゃんと休めるのかな?」
「残業ばかりでは?」
という不安があるかと思います。
そこで、建設設備業界の働き方について、実際のデータや求人情報を元に詳しく見ていきましょう。建設設備業界の平均労働時間について調査した、次のデータをご覧ください。
職種 | 月の労働時間 |
電気工事士 | 168時間 |
配管工 | 174時間 |
電気通信技術者 | 163時間 |
1日8時間で20日間勤務したとすると160時間、22日勤務で176時間になります。
ただ、これは平均値なので、常に残業が少ない状態ではないことを覚えておきましょう。設備工事を含む建設業全体は工期がある仕事なので、繁忙期や工期が迫っている時期は連勤になる場合もあるからです。
さらにメンテナンスに関わる仕事の場合は、建物が稼働していない時期に作業を行わなければなりません。お盆、正月、GWなど世間一般的な長期連休の際に、業務が発生するのです。
反面、閑散期や工事が落ち着いている時期は代休や有休を取りやすい環境にあります。
ここで、実際の求人を見てみましょう。
A社
職種/計装エンジニア |
B社
職種/施工管理、施工支援(技術職) |
C社
◎完全週休2日制(土日) |
基本的には完全週休2日制である会社が多く、年間を通してみれば休日はしっかり確保されています。
建設設備の業界は「繁忙期は残業が多く休めないが、閑散期に代休をとって調整できる」働き方だと言えるでしょう。
5.建設設備の業界の福利厚生
収入や休日の他に重要なのが、福利厚生です。建設設備の業界の福利厚生について、どのようなものがあるのか説明していきましょう。
実際の求人は次の通りです。
D社
職種/計装エンジニア |
B社
職種/施工管理、施工支援(技術職) |
C社
職種/ルートセールス、施工管理 |
上の表からもお分かりの通り、育児休暇や産前産後休暇、介護休暇、生理休暇など、女性が働きやすい環境を整えている会社もあります。
建設業界は男性社会だと思われがちですが、ここ数年は女性の従事者の定着を図るための動きが活発です。
実際に、国土交通省で2020年より「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」を策定し、女性が働きやすい環境作りやキャリアアップシステムの構築に取り組んでいます。(出典:国土交通省HP)
しっかりと福利厚生を整えている会社を選べば、女性でも働きやすい業界だと言えるでしょう。
6.建設設備の業界で必要な資格やスキル
建設設備の業界で必要な資格やスキルは、携わる工事内容によって変わってきます。
「2.建設設備の業界を支える仕事の種類は主に4つ」で説明した4つの仕事の種類を元に、必要な資格とスキルを解説していきましょう。
職種 | 必要な資格・あると有利な資格 |
電気工事 | 【必要】 【あると有利】 |
電気通信工事 | 【必要】 【あると有利】 |
管工事 | 【必要】 |
機械器具設置工事 | 【必要】
|
建設設備の業界は専門的な知識や技術が必要になるので、それぞれの職種で資格が必要になります。
最初の下積み期間で資格がないうちは、限られた作業にしか携われません。仕事をしながら実務経験や勉強を重ね、資格を取得して携われる範囲を広げていくのです。
資格も一つの資格を取って終わりではなく、複数の資格を組み合わせることでさらにスキルアップを図ります。
7.建設設備業界でのキャリアアップ
建設設備の業界では、未経験で入社した場合、どのようにキャリアアップしていくのかを説明していきましょう。
建設設備の業界で働いた場合の将来像について、具体的にイメージできれば幸いです。
まずは、建設設備の業界のキャリアアップを示した次の図をご覧ください。
この図からもお分かりのように、建設設備の業界では、入社してから5年程度は下積みの期間があります。その間に業務に必要な資格を取得したり、現場での仕事を覚えて、自らのスキルアップを目指しましょう。
大体6年目をすぎると、有資格者が増えてきます。その結果、自分でできる仕事が増えるだけでなく、現場を取り仕切る立場になる人も多いです。
部下ができ、部下を育成したり仕事を振ったり、予算や下請けの管理を任せてもらうこともあるでしょう。
10年目を過ぎると、ベテランとして現場の工事に責任を持つ立場に昇進できます。数億円単位の工事現場を任せられ、滞りなく進むように進行を管理したり他職種の人たちの連携、コミュニケーション、仕事の割り振りなどを行います。
8.建設設備業界が向いている人
建設設備の業界が向いているのは、主に次のような人です。
建設設備の業界が向いている人 |
|
「2.建設設備の業界を支える仕事の種類は主に4つ」でも説明した通り、建設設備の業界は専門知識が必要だったり、細かい作業が求められます。ものづくりが好きであることや、根気強さ、向上心が必要です。
また、コミュニケーション力やマネジメントスキル、対応力なども重要なスキルです。
実際に建設設備の業界に就職、転職した人たちの声を見てみましょう。
◎A社先輩社員の声「コミュニケーション力が必要」
この仕事をしていると、職人さんやゼネコンの方など、多くの人と関わります。最初は分からなくて怒られることもありますが、次第に現場に慣れてくると、プライベートや仕事のことなど、会話が増えてきます。そうやって多くの人たちと人間関係を築きながら、建物が完成した時にはとても感動する瞬間です。 |
◎B社先輩社員の声「段取り上手な人に向いている仕事」
最初は分からないことだらけで失敗も多く、落ち込むこともありました。ですが、工程に沿って他業種との調整、材料の手配など、工事がスムーズに進むようにうまく段取りができると「仕事が楽しい!」と感じるようになります。 |
◎C社先輩社員の声「日々勉強!臨機応変な対応力が必要とされる仕事」
この業界は、地図や歴史に自分が関わったものを残せるという魅力があります。その中でも私が携わるのはビルにとって腎臓のような役割を担う「排水再利用設備」のメンテナンスです。トラブルがあり駆けつけた時に、「君に来てもらえてよかった!」という言葉を頂くと、とても嬉しく感じます。 |
建設設備の業界は、自分で作業をすることはもちろん、スキルアップしていくと部下に指示を出したり他業種との連携を図ることも求められます。
だからこそ、手先の器用さやものづくりのこだわりだけでなく、コミュニケーション力や対応力など、幅広いスキルが必要だと言えるのです。
9.建設設備業界の将来性は高い
ここまでのお話しで、「建設設備業界って、ちょっと良いかも!」と思った人も多いのではないでしょうか。
ただ、
「せっかく働くなら長く働きたい」
「安定した業界で働きたい」
と考えている人もいるでしょう。
結論からお伝えすると、建設設備業界は将来性が高い業界だと言えます。国土交通省による建設投資額の推移を調査した次のデータをご覧ください。
参考:国土交通省「建設投資見通し」を元に作成
上記のグラフからも分かるように、国内の建設投資は年々増加しています。
なぜなら、建設設備の工事は建物がある限り、なくならない仕事だからです。建設設備業界の仕事にはメンテナンスや修理も含まれますので、建物があり設備を取り付けた以上、仕事は発生し続けます。
ここ数年は新型コロナウイルス流行などの社会情勢もあり建設業自体の景気は下降気味でしたが、今後は観光業の勢いと共に、建設業自体も盛り上がりを見せるでしょう。
建設設備業界は、建物がある限りなくならない、将来性の高い仕事なのです。
10.まとめ
いかがでしたか?建設設備の業界について、仕事内容や働き方、必要な資格などを解説してきました。
最後にこの記事をまとめましょう。
◎建設設備の業界とは、建物の快適性を高めたりインフラを整える仕事
◎建設設備の業界を支える仕事は主に4つ
- 電気工事
- 電気通信工事
- 管工事
- 機械器具設置工事
◎建設設備の業界の平均年収は約415万円で、月給に換算すると約35万円
◎建設設備の業界の働き方は「繁忙期は残業が多く休めないが閑散期に代休をとって調整できる」
◎建設設備の業界の福利厚生は、育児休暇や産休、介護休暇なども取得できる
◎建設設備の業界で必要な資格は次の通り
職種 | 必要な資格・あると有利な資格 |
電気工事 | 【必要】 【あると有利】 |
電気通信工事 | 【必要】 【あると有利】 |
管工事 | 【必要】 |
機械器具設置工事 | 【必要】 |
◎建設設備でのキャリア形成は次の通り
|
◎建設設備の業界が向いている人は次の通り
|
◎建設設備の業界の将来性は高い
以上になります。
建設設備の業界は、建物の快適性を高めたりインフラを整える、私たちの暮らしになくてはならない仕事です。
専門性の高い仕事なので難しさもありますが、向上心を持って取り組めば現場で慕われる責任者までスキルアップできるでしょう。
この記事で建設設備の業界の魅力を知り、あなたの将来の選択肢が広がる手助けになれば幸いです。
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