
「建設業界は働き方改革が進んでいると聞くけど、現場の実態はどうなの?」
「2024年問題から時間が経ったけど、本当に残業は減ったの?」
「週休2日は実際に取れるようになってきているのか?」
建設業界への転職を検討している方、あるいは現在建設業で働いている方にとって、「働き方改革が実際にどこまで進んでいるか」は非常に重要な判断材料です。
2024年4月に時間外労働の上限規制が建設業に適用されてから1年以上が経過しました。
法律は変わりましたが、現場の実態は会社・規模・工事種別によって大きな差があるのが現状です。
この記事では、建設業界の働き方改革の背景・これまでの成果・残る課題・現場の実態を最新データをもとに整理し、就職・転職先を選ぶうえで役立つ情報をお届けします。
目次
建設業界で働き方改革が必要だった背景
長時間労働が「常態化」していた建設業界
厚生労働省が発信する「はたらきかたススメ」のデータによると、2024年の建設業の年間実労働時間は全産業平均より48時間長く、出勤日数も11日多いという結果が示されています。
かつては「月100時間超の残業が当たり前」という現場も多く存在しており、建設業界の長時間労働は構造的な問題として長年課題となっていました。
この状況が若者の建設業界離れを引き起こし、慢性的な人手不足を悪化させる悪循環につながっていました。
「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージにも、こうした長時間労働の実態が大きく影響しています。
2019年からの働き方改革関連法、そして2024年問題へ
2019年4月から一般業種に時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)が適用されましたが、建設業は「特例業種」として5年間の猶予が認められていました。
この猶予期間が終了し、2024年4月1日から建設業にも同規制が適用されました。
「2024年問題」と呼ばれたこの変化では、違反した場合に「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が設けられ、企業は本格的な対応を迫られることになりました。
【ポイント】 2024年問題は単なる「残業削減の目標」ではありません。建設業にも時間外労働の上限規制が実際に適用され、企業側の対応が必要になったことが大きな転換点です。
働き方改革の成果:ここまで変わった
成果1. 残業時間の削減が数字として表れてきた
2024年の規制適用以降、建設業界全体の残業時間は減少傾向に転じています。
特に大手ゼネコン・準大手では、DX活用・人員配置の見直し・業務効率化などにより、残業時間の削減が数字として表れてきています。
マイナビの調査(2025年7月公表)では、2024年の建設業における就業日数と労働時間が減少しており、時間外労働の上限規制適用の効果が現れ始めていることが確認されています。
また、「待遇に不満があって転職した」という建設技能者の割合も、2021年の24.8%から2024年には17.4%へと低下しています。
成果2. 週休2日工事の普及が着実に拡大
国土交通省の直轄工事では、週休2日工事の実施率が大幅に向上しています。
令和7年度(2025年度)には、都道府県の直轄工事での週休2日100%実施を目標に設定しており、公共工事を中心に週休2日制が急速に普及しています。
完全週休2日制を導入した企業には「総合評価落札方式」での加点措置も設けられており、週休2日制の導入が企業の競争力にも影響する仕組みが整備されています。
成果3. DX化による業務効率化が加速
施工管理アプリ・電子黒板・クラウド型書類管理の普及により、かつて夕方以降に大量発生していた書類作業が大幅に削減されています。
・写真管理の自動化 …電子黒板と連携した写真撮影により、従来数時間かかっていた写真整理を大幅に短縮
・書類作成のテンプレート化 …安全書類・品質記録・発注書類のデジタル化により、転記作業・手書きが不要に
・現場と事務所のリアルタイム情報共有 …クラウドを使った情報共有により、帰社後の報告作業が減少
国土交通省が推進する「i-Construction 2.0」では、2040年度までに省人化3割・生産性1.5倍を目標としており、今後もデジタル化による業務効率化は加速する見通しです。
成果4. 多様な人材の活躍推進
女性施工管理者の割合が2024年に10%(新規採用では20%)まで上昇しており、業界全体で女性・多様な人材の活躍推進が進んでいます。
現場における女性専用トイレ・更衣室の設置、育休制度の整備・活用推進、女性用作業着の整備など、ハードとソフトの両面で環境整備が進んでいます。
【ポイント】 働き方改革は「残業を減らす」だけではありません。休日・業務効率・職場環境・多様な人材の活躍まで含めて、建設業界全体の働き方が変化しています。
残る課題:現場の実態
課題1. 企業規模による改革の「二極化」
働き方改革の進展には、企業規模による大きな差があります。
大手ゼネコン・準大手では改革が着実に進んでいる一方、中小規模の建設会社では対応が遅れているケースも目立ちます。
ICT投資の資金・人材・ノウハウが不足している中小企業では、「法律は変わったが現場の実態は変わっていない」という状況が残っています。
そのため、企業を選ぶ際には「企業規模・DXへの取り組み状況」を確認することが重要です。
課題2. 民間工事への波及が遅い
週休2日制の普及は公共工事で先行していますが、民間工事への普及には依然として課題が残っています。
民間発注者の工期・コストへの要求が厳しいケースでは、週休2日を実現するための工期設定が難しく、現場での休日確保が困難な状況が続いています。
発注者側の理解と協力なしには、受注企業だけの努力では限界があるため、官民一体での取り組みが引き続き必要です。
課題3. 収入減への懸念
労働時間の削減が進む一方で、従来残業代に依存していた技能者にとっては、収入減につながるリスクがあります。
国土交通省は「適正な労務費の確保」「価格転嫁の促進」を政策として推進しており、2025〜2026年の担い手三法の施行により、原価割れ契約・工期ダンピングの禁止が強化されていきます。
基本給・所定内賃金の引き上げによって収入を維持する方向への移行が進んでいますが、完全な移行には時間がかかるのが実情です。
課題4. 人材確保と担い手育成
働き方が改善されても、建設業界の人手不足は構造的に解消されないという課題が残ります。
就業者の高齢化が進む中、若手入職者の確保と育成が業界全体の重要課題です。
建設キャリアアップシステム(CCUS)による技能者の経験・資格の見える化や、処遇改善による若者の定着促進が進められていますが、担い手不足の解消には長期的な取り組みが必要です。
2025年以降の法改正:働き方改革がさらに加速する

2024年の上限規制適用にとどまらず、2025〜2026年にかけて建設業界に関わるさらなる制度改革が続きます。
・2025年4月:建築基準法4号特例廃止 …2階以下の木造住宅にも構造計算書等の提出が必要となる範囲が広がり、設計・確認申請業務への対応が求められる
・2025年施行:担い手三法(追加) …「著しく低い労務費」の禁止・原価割れ契約禁止・工期ダンピング対策などが強化され、適正な工期・コストの確保を促進
・2026年:約束手形(紙)の廃止 …資金繰り改善を目的とした取引の透明化が進み、財務基盤の安定した企業が競争優位を持ちやすい環境へ
これらの制度改革は、建設業界全体の「商慣習の変革」を促すものです。
変化への対応が遅い企業は経営が厳しくなる一方、適切に対応できた企業は競争力を高める可能性があります。
就職・転職先を選ぶ際には、これらの変化に対応している企業かどうかを見極めることが非常に重要です。
働き方改革が進んでいる職場を見極める方法
「制度は変わったが、現場の実態はどうなのか」を見極めるために、転職・就職活動で確認すべき具体的なポイントを整理します。
平均残業時間・年間休日を実績値で確認する
求人票の数字だけでなく、面接で「直近1年間の平均残業時間」を具体的に質問しましょう。
表面的な求人条件だけではなく、実際の働き方を確認することが重要です。
施工管理アプリの導入状況を確認する
「どのシステムを使っていますか?」と質問することで、企業のDXへの取り組み度合いを把握できます。
具体的な施工管理アプリやクラウドシステムを導入しているかどうかは、業務効率化への意識を判断する材料の一つです。
週休2日の「実態」を確認する
「土曜日は全員出勤ですか?」と率直に聞いてみましょう。
また、求人票に記載された「週休2日制」と「完全週休2日制」は意味が異なるため、実際にどの程度土曜日が休みなのかを確認することが大切です。
口コミサイトなどを利用して、社員の声を調べる方法もあります。
女性社員・育休取得率を確認する
女性社員の在籍状況や育休取得率は、多様な人材が働きやすい職場かどうかを判断する一つの指標になります。
性別やライフステージに関係なく働き続けられる環境が整っているかを確認しましょう。
離職率・平均勤続年数を確認する
働きやすい職場かどうかを判断するうえで、離職率や平均勤続年数は重要な指標です。
面接で直接質問したり、口コミサイトなどで確認したりすることで、求人票だけではわからない職場環境を把握しやすくなります。
【ポイント】 良い職場を見つけるには、「求人票に書いてある制度」ではなく「実際にその制度が使われているか」を見ることが重要です。
正社員型派遣で「働き方改革が進んだ環境」を選ぶ
「働き方改革が進んでいる職場で施工管理のキャリアを積みたい」という方に、一つの選択肢としてお伝えしたいのが正社員型派遣という働き方です。
正社員型派遣は、派遣会社と正社員(無期雇用)契約を結びながら、さまざまな建設会社の現場でプロジェクト経験を積む働き方です。
派遣先との契約に基づいた勤務となるため、労働時間が適切に管理されやすく、サービス残業が発生しにくいという特徴があります。
また、特定の一社・一現場に縛られないため、
「この現場の働き方は自分に合わない」
と感じた場合に、次の現場へ移りやすい点も特徴です。
さまざまな現場・企業を経験しながら、「自分に合った働き方」を探せる環境とも言えます。
当社では、施工管理の働き方に悩んでいる方・より良い環境でキャリアを積みたい方に向けて、丁寧なキャリア相談を承っています。
「今の職場より働きやすい環境で施工管理を続けたい」
「施工管理として長くキャリアを築きたい」
という方も、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
建設業界の働き方改革の進捗と現場の実態について、重要ポイントをまとめます。
・2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制(原則年360時間・月45時間)が罰則付きで適用
・成果として、残業時間の減少・週休2日工事の普及拡大・DX化による業務効率化・多様な人材の活躍推進が確認されている
・一方で、企業規模による二極化・民間工事への波及の遅さ・収入減への懸念・担い手不足という課題が残る
・2025〜2026年にかけても建築基準法改正・担い手三法・約束手形廃止など制度改革が続く
・転職・就職先を選ぶ際は「残業時間の実績値・DX導入状況・週休2日の実態・離職率」を具体的に確認することが重要
建設業界の働き方改革は、「完了」ではなく「進行中」です。
法律は変わりましたが、現場への浸透には企業・規模・工事種別による差があります。
そのため、「建設業界は働き方が改善された」と一括りにするのではなく、自分が働く企業・現場の実態を確認することが重要です。
働き方改革が進んでいる職場を選ぶことができれば、施工管理としてのキャリアを続けながら、以前よりもワークライフバランスを確保しやすくなる可能性があります。
「残業を減らしたい」
「週休2日をしっかり取りたい」
「施工管理の仕事は続けたいけれど、今より働きやすい環境に移りたい」
という方は、求人条件だけで判断せず、企業の実態まで確認したうえで転職先を選びましょう。
当社でも、施工管理職としてのキャリアと働き方の両方を考えたキャリア相談を行っています。
ぜひお気軽にご相談ください。
参考資料
参考:厚生労働省「建設業・ドライバー・医師の時間外労働の上限規制 特設サイト」 https://hatarakikatasusume.mhlw.go.jp/construction_company.html
参考:国土交通省「建設業における働き方改革について」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk2_000080.html
参考:国土交通省「建設業の週休2日の推進についてhttps://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsu/const/tochi_fudousan_kensetsu_const_tk2_000113.html
参考:国土交通省「令和6年度 建設産業における女性定着促進に関する実態等調査結果」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk2_000114.html


コメント